点火時期を進めたい(その1)
今時、手描きのグラフってのもなぁ...
ってことで、気づけば最終更新から4年近くの年月が経ってたんだけどね。
この4年で、世の中はガラリと変わったというか、Corona changed everythingって感じで、新しい生活様式なるものが押し寄せ、それに伴い、全然人気がなかったバイクが高騰し、GB250の中古も手に入りづらくなったとか。
まぁ、私はと言うと、そんな世相とは関係なく、自分好みのGB250をコツコツと作っていってるわけですが、今回は点火時期のお話。
※以下、GB250を主題とした記事となりますが、CDI点火の単気筒なら、ほぼ全車共通かと思います。
純正のCDIが欠品となって久しいですが、ここ数年、純正代替用としてGB250界隈でもよく話を聞くようになった青い中華製CDI。アマゾンなどで安く手に入りますし、Aliexpressとかだと送料込みで600円程度で買えるってこともあり、Youtubeなどでもよく動画が上がってまして、私も話のネタにこっそり交換してみたんですが、「こりゃダメだ」って印象で、速攻外しました。
※購入時はコネクタ形状に注意
というのも、この青いCDI、点火時期が固定で、上はまだしも、アイドリング域では点火時期が早すぎ=振動が激しすぎるというか、エンジンがとても苦しそうに回る感じ。人によってはトルクフルに感じるのかもしれませんが、純正が低回転域でわざわざ点火時期を遅らせるのには理由がありますし、付け替えてアイドリング回転数が上がった=高性能ってほど単純な話ではないので、私は継続して使う気になりませんでした。
で、GB250の純正CDIは、全年式で、いわゆるアナログのAC-CDIなんですが、これをもう少し詳しく解説すると、
アナログCDI:コンデンサや抵抗、サイリスタなど、単なる電子回路だけで構成されているCDI。CDI内部では、点火時期に関してマイコンなどによる演算などは一切してません。
AC:点火用コンデンサに蓄える電気を、エンジンについている点火用ACコイル(エキサイターコイル)から直接入力する方式。充電・灯火用とは別に、点火用の発電機が独立しているので、CDIが故障してなければ、押しがけすれば必ずプラグに火が飛びます。(エンジンがかかるかは別問題)
対して、DC-CDIはレギュレートレクチファイヤで整流後のDC12V(通常はバッテリー)をCDIに入力→内部の昇圧回路で昇圧して点火用コンデンサに蓄えますので、バッテリーが弱ってると、押しがけしてもプラグに火が飛ぶかは運(バッテリーの上がり具合や押しがけ時の車速など)次第。
って感じになるのですが、ここで大事なのは、アナログCDIは、点火すべきクランク角度を内部演算しているのではなく、クランクで拾った点火信号から「どれだけ(時間を)遅らせるか」をアナログ回路で実現しているだけなので、
アナログCDIは、AC-CDI、DC-CDI問わず、エンジン内部の点火信号用ピックアップセンサー(GB250では、エンジン右側のオイルポンプの上あたりに実装されてます)のセット位置で物理的に決められたクランク角度より点火時期を進めることができない
ってことです。(逆説的に言うと、長穴加工などによりセンサーの物理位置を動かすことで、全体的に点火時期を前後させることは可能です)
便宜上、言葉では、上死点を基準として点火時期の「進角」と表現しますが、アナログCDI内部で行われていることは、コンデンサと抵抗(CRタイマー)を用いて、蓄電されたコンデンサから点火コイルへの放電タイミングをアイドリング域などに合わせて「(時間を)遅らせている」だけのようです。(ピックアップセンサーの位置は、ピークで最適な点火時期になるよう位置決めされている)
また、アナログCDIでアジャスタがついているタイプは、CRタイマーの抵抗値を可変することで、アイドリング域〜最大進角へ至る角度を変えるだけで、最大進角(ピックアップコイル依存)、最大遅角(コンデンサ容量依存)の値そのものは変化しないはずです。
参考:http://jasaga.html.xdomain.jp/zyoru/tenka_sinkaku_hansi_1.html
よって、アナログCDIは、火花が多少強くなる事はあるんでしょうが、交換によるピーク域の出力特性は基本的にはノーマルCDIと同じ=進角しすぎてエンジンブローなんてことは原理的に発生しないことになりますので、比較的安心してパーツの違いを試すことができます。
計算上では8度→16度ぐらいまで進角(+8度)するはずなんですが、
ただし、アイドリング域で遅角していない固定進角のCDIだと、
ピストン上昇中に混合気に点火→圧縮上死点到達前に最大燃焼到達→ピストンを逆回転させる方向に力が働く→キック始動だと盛大にケッチンを喰らう
ことになりかねませんので、流用の際はCDI選定には注意が必要かと思います。
※CDIの交換で点火用ピックアップセンサーがセットされたクランク角よりさらに点火時期を進角させたい場合は、点火タイミングを「演算」して制御する、いわゆるデジタルCDIが必要となります。リアルタイム計算ではなく、回転数やギアやアクセル開度などに応じた点火時期を予め3Dマップとして持つ、インテリジェントなCDIもありますね
CDIを駆動するには、最低限、
・放電用コンデンサに充電するための電源入力(ACまたはDC)
・放電タイミングをトリガーするトリガー信号入力
・イグニションコイルへの出力線
・アース線
の4つが必要ですが、GB250の純正CDIでは、これに加えて、
・キルスイッチの入力(キルスイッチ操作でCDIから火が飛ばなくなる)
・サイドスタンドスイッチ制御(サイドスタンド状態でギアが入ったら火が飛ばなくなる)
がユニットに実装されています。カブやモンキー用の5PinのCDIは、サイドスタンド制御が実装されていないことが多いですが、それさえ無視すれば、基本的にはどの車種のCDIも流用可能(固定進角CDIは単に点火性能の違いのみ、他社種流用だと、アイドリング域のFマークが違ったり、最大進角まで進む回転数が変化する)と思います。
※車体側のサイドスタンド線は、未接続のままでも、CDI側のアース線に繋いでも、サイドスタンド警告灯自体は正常に機能(スタンドを下ろすと警告灯が点灯)します。
※キルスイッチは、AC-CDI方式ではRUNポジションで(スイッチ部で)回路が切断、OFFポジションでCDIの放電用コンデンサへの充電ラインが、コンデンサの手前でアースに落ちる→コンデンサに充電されなくなる→点火できないという回路になってる(マイナス制御)事が多そうです。逆に、DC-CDIやトランジスタ点火の場合は、キルスイッチを経由してイグナイタ側に電気が流れる回路で、OFFポジションで点火装置への電源供給を切断→イグナイタが駆動できない→点火できないって感じっぽいです。なので、汎用後付けキルスイッチには、RUNで通電、RUNで切断の2種類があります。(GB250で使うには、RUNで切断タイプのキルスイッチが必要です)
アナログCDIは単価も安く、また、前述の通り、最大進角は変化しない=高回転域のノッキングにはそれほど気を使う必要もないので、とっかえひっかえして遊ぶには結構楽しいおもちゃなような気もします。
が、やっぱ、GB250の最大進角28度ってのは、まだまだマージンがありそうというか、4000~10000回転の広い範囲を28度固定で点火してるってことは、単純計算で角速度が2.5倍も違う(上死点近辺なので、ピストン速度はそこまでの違いはない気もする)=高回転域であと少し進角すれば、無理なくパワーが取り出せる...といいなぁ。
まぁ、実機のピックアップ位置(28度)が、ピーク出力に最適な位置にセットされてるのだとしたら、ノーマルよりも進角させることにはリスクしかないのですが、最近の機種だと、排ガスや騒音の規制を回避するため、わざと点火時期を遅らせてたりもするようですしね。
デジタルCDI
こちらは、
ピックアップ信号の入力周期をCDI内部で計測、入力→次の入力までの経過時間から現在のクランク回転数を演算し、その回転数に応じて予め設定されたタイミングで点火コイル側に放電する
というのが基本的な設計となり、点火タイミングをユーザ側で任意に設定できるのが「プログラマブル」って感じだと思います。
よって、デジタルAC-CDI、デジタルDC-CDI、どちらもあり得るはずです。(デジタルAC-CDIが製品として存在しているのかは不明ですが)
いずれにせよ、演算のキーとなるのはピックアップ信号ということはアナログCDIと何ら変わりませんので、ピックアップセンサーの取り付け角度さえ分かれば、他車専用設計品からの流用も原理的には可能なはずです。
ただ、こういう計測結果を見ると、クランク速度のムラから来る演算精度なのか、はたまたノイズの影響なのか、一筋縄ではいかない感じではあります^^;
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